子宮内膜炎は二種類あります。
1、急性子宮内膜症
2、慢性子宮内膜炎
不妊に関係してくるものは慢性子宮内膜炎で症状があまり顕著ではないのでわかりづらい病気です。なかなか妊娠できず検査をして判明する方も多いかと思います。
慢性子宮内膜炎は子宮内膜の深い基底層にまで細菌が侵入し、炎症が持続している状態で、月経が起こり、子宮内膜が作られるたびに炎症を繰り返すので自然には治りません。
治療法としては抗生剤の服用が主な治療法になっています。
◯反復着床障害の14~31%、
◯原因不明不妊症の28%、
◯反復流産の9~13%
の人に慢性子宮内膜炎が認められているそうです。(2017年の研究段階)
増加傾向にある子宮内膜症や子宮内膜ポリープが慢性子宮内膜炎について、両疾患において関連性があることもわかってきているそうです。
慢性子宮内膜炎の原因は多様な微生物による子宮内感染です。
CD138という抗原を持つ免疫細胞が内膜に炎症をおこしているのではないかともいわれています。
◯子宮内膜ポリープを含む子宮内膜の異常が器質的に子宮内膜の炎症を誘発し、子宮内膜炎に至る可能性が指摘されています。どちらも根本的な原因や治療法を含め、まだ明らかになっていないことが多いのが現状です。
◯2021年の論文では、子宮内膜ポリープを有する不妊患者の約92%が、ポリープ切除後の検体から慢性子宮内膜炎と診断されました。
◯切除後、約30%に抗生剤投与、70%には投与しないでいたところ、投与しない群の方が回復率が優位に高く、回復期間も短かったという結果も出ているそうです。
その他の研究でも子宮病変がある場合の手術での慢性子宮内膜炎の治癒率が上がるという報告もあります。
【慢性子宮内膜炎の有症率】 → 【手術における治癒率】
子宮病変がない(15.7%)
子宮内膜ポリープ(85.7%) → 子宮内膜ポリープ(89.7%)
粘膜下筋腫(69%) → 粘膜下筋腫(100%)
子宮腔内癒着(78.9%) → 子宮腔内癒着(92.8%)
中隔子宮(46.2%) → 中隔子宮(83.3%)
◯子宮病変がない場合においては、
子宮内の細菌やウイルスの異常な活動、つまり病原性の微生物により子宮内膜に持続的な炎症が起こることによって、活性化した免疫システムが受精卵を攻撃してしまうという可能性が指摘されています。
正常女性の子宮内に存在するラクトバチルス属は、こうした持続的に炎症を引き起こす細菌の活動を防いで、子宮内環境を整える役割があると考えられています。
(子宮内フローラの90%以上をラクトバチルス属が占めている女性は、そうでない女性に比べて妊娠率が大幅に高いそうです)。
抗生剤投与によって子宮内の良性微生物(ラクトバチルス属など)も減少してしまうので、治癒後に子宮内フローラを整えることが、慢性子宮内膜炎を再発させない予防になると考えられています。
(子宮内の細菌を調べるにはEMMA検査などがおすすめです。)
はっきりとした原因などが解明されてはないとはいえ、医学的治療法も日々進化しています。
流産を繰り返す方や、なかなか着床しない方など、まずは検査を受けて慢性子宮内膜炎と診断された際は、病院の先生としっかりと相談しながら進めていってください。
また、鍼灸治療によって子宮、卵巣にツボ刺激を与えることで、子宮内膜や卵巣の環境をさらに改善して着床を助けたり、質の高い卵胞を作るための環境づくりにお役立て頂ければと思います。