タイムラプスとは?(体外受精での培養の手法)

タイムラプスを理解するために、培養の流れを見てみましょう。

最近のスマホでは、ある一定の時間を連写し続けた写真を動画のコマ送りのように編集する機能が付いています。

早送りされた動画は、時間が凝縮され全体の時間の流れを追いやすいく、人物に至っては、パラパラ漫画の様な動きになって面白いですね。

 

妊活の治療においても、コマ送りのような経過観察のできる、タイムラプスの機能を使った培養の技術が進んできました。

採卵された卵子は、培養士によって精子と出会います。

その全ての工程は、インキュベーターと呼ばれる培養器で行われ、人の胚培養の場合、器内は、湿度70%、酸素5%、二酸化炭素5%に保たれ、細胞が子宮内と常に同じ環境で育てられています。

 

従来の培養技術では、一日に一回、培養器から受精卵を外に取り出し、撮影培養を行っていました。

1、受精卵を一度培養器の外に出すと、どうしても外気温に触れる事になります。その環境の変化が、極めて繊細な受精卵にかなりのストレスを与えていたと考えられています。

2、また、一日に一回の撮影では、24時間の間に、どのタイミングで何が起こったのか、明確に見極められませんでした。

これらのリスクを避ける為、ここ2、3年の間にタイムラプスインキュベーターが開発され導入されたのです。

タイムラプスインキュベーターでは、6分毎の撮影が可能になりました。

 

 

受精とは、卵子と精子の二つの核が並んで見えた瞬間で、すぐにこの2つの核は融合し、細胞分裂に向かい見えなくなってしまいます。

タイムラプスのおかげで、その貴重な瞬間を捉える事がでるようになりました。

お二人の卵子と精子の進み具合は毎回違いますが、ある一定数の平均値を見定めて授精に持っていくより、さらにベターなタイミングを図り得ます。

 

 

◯タイムラプスの細かい情報は、いつ何が起こったかを明確に撮影できる為、パートナーへの視覚的助言にも効果的です。

◯胚培養の発生率、発生速度、形態良好な胚盤胞率などが、時間を追って見える事で、胚盤胞移植後の妊娠率の向上など、移植に適した受精卵の選択の可能性を広げています。

◯実際にタイムラプスインベキューターでの培養により、妊娠率が8%〜10%向上したとの報告もあります。

 

治療における費用面はどの様になっているでしょう。

2022年の四月よりスタートした、不妊治療の保険適用では、タイムラプス培養は、保険適用内でできる先進医療とみなされています。(金額は、クリニックにより差はあると思いますが、あくまでもご参考迄に)

培養器一式をタイムラプスインキュベーターに置き換えられたクリニックでは、全ての培養にタイムラプスを使用する為、一律30000円ほど培養費が必要になります。対象となる卵子は一度に16個まで、17個以上は通常培養になります。

 

タイムラプスを患者さんの選択で採用しているクリニックでは、

通常培養費+27500円ほど。

更にオプションで

①画像記録のUSB化

②データを元に胚を評価した『KIDSCORE』の算出

③培養士からの説明などを含めて、約33000円。

クリニックによって、培養の技術、考え方、またご本人の思いと様々な治療法にと迷われますが、一つの技術の選択肢として。

一日一枚だった従来の培養写真から考えると、タイムラプスによる情報は、比べものにならない膨大な記録となり、これらの情報を元に、より精度の高い授精へと生かされていく事でしょう。

そして、空気に触れない、一定の環境で育つ受精卵の可能性も期待していきたいですね。