1980年代初めまでは、受精卵の凍結ができなかったため、体外受精の時に採卵された受精卵の多くを子宮内に戻していました。
そのため、5人に1人くらいの割合で双子での出産になり、三つ子になることもありました。
多胎での妊娠は、母体の負担も大きくなりますし、そのうちの4~5割が早産になってしまう事から、体外受精での出産には多くのリスクが伴うようになったのです。
未熟な低体重で産まれて来る赤ちゃんは、すぐさま小さな身体にたくさんのチューブで繋がれて、お母さんの前にやってくるのです。
そんなわが子の出産に、嬉しい反面、不安も一杯のご両親といった周産期施設での光景は、不妊治療のあり方に問題を呈したのです。
2008年、日本産婦人科学会は「子宮に戻す受精卵の数は原則1個」という指針を示し、多胎での妊娠、出産率を下げることになりました。
しかし、この指針に沿わない移植のケースもあることや、体外受精には一卵性双生児が微増するという傾向があるため、現在でも体外受精による妊娠、出産では5%程の(自然妊娠に比較して高い割合)双子での妊娠、出産があるのです。
また欧米などでは、高刺激での排卵誘発によって、一度に多くの採卵、受精、分割、遺伝子検査、凍結を行う治療法が一般的になっている事に加え、高額の医療費の負担を考えて、2度目以降の移植時には、多数の杯をいっぺんに移植してしまう事例もみられる事などから、ニューヨークを歩いていると双子、三つ子をよく見かけるなどとも言われています。
従来の不妊治療では、効果的に妊娠、出産できる治療法へフォーカスされていましたが、現在では、母体や卵巣へのリスクも考慮し、さらに将来産まれてくる子供たちのための遺伝子の問題や、後遺症、副作用などにも考慮した治療法などの様々な努力がなされているのです。