老いゆく精子と卵子、そして夫婦の関係もフォローが大切。

今回は、妊活には欠かせない(?)精子について、お伝えします。

「卵子の老化」は、皆さんよく耳にされると思います。でもそれって、卵子だけ? 人間誰しも平等に老いるもの。であるならば、精子もそれに伴って老化するはずでは?

精液の量、精子の数、運動率や直進率

一般的な不妊クリニックでの主な検査項目ですが、

精子の頭部内まで観察して選別する不妊クリニックでは、通院する40代男性の精子中、正常なものはほとんどないか、ごくわずかであることは珍しくありません。

精子の老化。

実際には、35歳から40歳くらいを過ぎると、女性と同様男性も、妊娠率が落ちてくることがいわれています。精液の量をはじめ、精子数、運動率、直進率など、50代では20代に比べて数~30数%低下するとのデータも。

考えればごく自然なことです。ほとんどの方は、20代の頃と比べたら体力は落ちているし、食欲だってあの頃ほどはないですね? 

コレステロール値が上がっているかもしれないし、血圧もちょっと高めだったり。私は、お肌のハリが……、たるみが……、お腹のお肉が……、何なら物忘れも……などと鏡を見てはドーン!となります。

でも、懸命に人生を重ねてきたことでもあります。年と共に、より深い思いやりで相手を慮り、共に妊活を歩まれることを願っています。

 

もともと赤ちゃんは、簡単には授からないようできている?……

多くの患者さんたちのケースに触れるにつけ、私は、むしろ

正常な精子は、年齢の違いこそあれそもそも多くはないのではと考えます。

昆虫などでは、一度に数千匹と多数生まれて、そのほとんどが捕食されてしまいます。そうして、生き残ったものが子孫を残す。それでだいたいバランスがとれています。

私たち人間ではどうかというと、まず捕食されることはなく、少子化といわれながらも何とかバランスをとっています。ということは、ヒトという種として、人口爆発を防ぐためにも「よい精子」がそうそういてもらっては困るということなのかもしれません。これは卵子にもいえることなのでしょうが。

命が生まれるには、「よい精子」と「よい卵子」が出会うことが必須です。

片方のみでは不可能です。でも残念ながら、「精子は問題ないから、よい卵子待ち」で奥さまのみが何年もクリニック通いを続けていらっしゃるケースが多いです。

「私の卵子がよくないから」「E₂やFSHなどのホルモン値がよくないから」とご自分を責めてしまう奥様のなんと多いこと。

また「なぜわかってくれないの」と旦那さまを恨んでしまうことも。そうして、妊活を続ければ続けるほど、心の傷を深めていきます。孤独な妊活です。これは続きません。離婚のきっかけにもなりえます。

妊活は、長引けば長引くほどお二人のよい関係性が必要となってきます。

でなければ、通院頻度や身体への負担が圧倒的に高い奥さまが、がんばれません。逆に、がんばれているご夫婦は、旦那さまが、妊活をご自身の課題ととらえて奥さまを支えていらっしゃいます。

あえて言うなら、人間の赤ちゃんは、とくに30代、40代では、そう簡単には授からないようにできているのではないでしょうか?だから、誰も悪くないし、欠陥があるわけでもありません。

(老化は悪でも欠陥でもありません)。実はあなたは、現在すでに完全です。『完全』である上に、赤ちゃんを授かることを望んでいる、ただそれだけなのです。

長丁場になるかもしれないその妊活をがんばるには、お二人が妊活への認識を共有し、誰も何も責めず、一緒に進む気持ちをもち続けることだと、当院の患者さんたちは身をもって教えて下さっています。